新規IT事業に『MVP開発』をおすすめする強い理由とは?

『MVP開発』という言葉をご存知ですか?
「MVPなんて言語あったっけ……?」と不安になられるかもしれませんが、大丈夫です。MVPは言語ではありません。

しかし1日ごとに技術が進歩している現代のIT業界、
特にスタートアップや新規IT事業を興す際には、絶対に『MVP開発』を知っておいたほうがいいです。
この記事では、MVP開発の基本概念やメリット、実践的な使い方等をご紹介します。

目次

MVPとは何か?

MVP開発のMVPはMinimum最小限の Viable実用可能な Product製品の略です。

通常の開発手法では、最初に全体の構成や必要な機能を洗い出し、計画を立てるところから始まります。
MVP開発では、土台や拡張性、堅牢性等を考えず、とにかく必要最小限のサービスを最初に作成します。

それを元にユーザーフィードバックを集めることで、
プロジェクトの改善点や、そもそも需要があるのかといった点を知ることが出来るのです。

通常の開発手法との違い

簡単に説明しましたが、まだ若干わかりにくいかと思いますので例えで説明しましょう。

例えばあなたが『音楽のストリーミングサービス』を作りたいと思ったとしましょう。
いずれは100万人以上の人に利用してもらいたいと思っています。

通常の開発手法ならば、まず準備からして大変です。

まずストリーミングサービスには何が必要か考えます。
音楽を再生する機能だけでなく、プレイリストやお気に入り機能も付けたいと考えます。
また、購入画面や決済機能、ランキングやプロモーション画面も必要でしょう。
何万曲もの中から最適なものを探せるよう、検索システムにもこだわらなければいけません。
たくさんのプログラマやエンジニアを用意し、これら機能を1つ1つ実装していきます。

気の遠くなるような作業量ですが、あなたは2年と数千万もの資金を掛け、満を持してリリースの日が来ました。
しかしユーザーの評判は微妙です……。調査したところ、必死に力を入れた機能はほとんど使われておらず、別の機能が必要なことがわかりました。

あなたは、慌ててサービスの改善に取り組みます。
新機能の追加には1千万円ものコストと、1年もの期間がかかりました。

ようやく新機能がリリースできる、となった頃、あなたは愕然としました。
あなたのアプリよりも優れていて、格好良く、たくさんの曲が聞けるストリーミングサービスを、業界最大手のIT会社がリリースしたのです。
あなたは目の前が真っ暗になりました。


一方で、MVP開発を行った場合はどうでしょうか?

MVP開発に「完璧な製品」はいりません。
とにかくそのサービスの重要な部分は何なのか、その部分だけに注力し、他の機能は省略・もしくは最低限の実装を行います。

実は『音楽のストリーミングサービス』でMVP開発をした実例があります。
皆さんもよく知っているサービス、『Spotify』です。

最初にリリースされたSpotify

上の画像を見ても分かる通り、最初のSpotifyにはほとんど機能がありませんでした。
プレイリスト機能もなければ、お気に入りやランキングもありません。
何より曲自体もここに載っているのが全て……20曲以下しか入っていませんでした。

しかしSpotifyの売りにしたかった部分、
『再生ボタンを押したら瞬時にその曲が再生されること』
そこだけはしっかりと開発を行いました。(当時の音楽サービスはダウンロードにとても時間がかかったので、この技術は画期的でした)

そのとても貧弱なプロトタイプを、Spotifyの生みの親であるダニエル・エク氏は家族・友人・興味を持った数人のユーザーに使ってもらいました。
エク氏がこだわった『再生ボタンを押したらすぐにその曲が聞ける』機能はとても評判がよく、同時に改善点等のフィードバックをたくさんもらうことが出来ました。
あとはそのフィードバックや利用状況等から、サービスの改善を着々と行っていけばいいだけです。

このプロジェクトはどこまで成功したでしょうか。
Spotifyのユーザー数は、現在4億人を突破。音楽アプリとして首位の座に君臨しています。

MVPのメリット

MVP開発に関して、ある程度イメージしていただけたでしょうか。
MVP開発のメリットについて、今一度明文化してみます。

メリット1:製品を求める人がいるのか、いち早く確認できる

製品の開発や、新規事業の立ち上げを行った方ならわかるかと思いますが、その製品がどれだけ受け入れてもらえるかは、一番ドキドキする部分ですよね。
MVP開発の最大のメリットは、最小限のコストで「その製品にニーズがあるかどうか」を判定できるところにあります。

もしあなたの考えるプロダクトが本当に素晴らしいのであれば、MVP開発の成果物でも十分に好ましいフィードバックが帰ってくるでしょう。

一方で、アイデアが悪かったりずれていたのならば、イマイチなフィードバックしか帰ってこないことになります。
しかしそれはそれで問題ありません。まだ最小限の時間とコストしか割いていないのです。残った時間と資金で次に挑戦出来ます。

メリット2:『本当のターゲット層』や『ユーザーが抱えている問題』をいち早く確認できる

『想定していたターゲット』と『本当に必要としていた人』が食い違うのは、新商品や新サービスを作る上でよくあることです。

皆さんがよく知る『Instagram』も実はMVP開発から生まれたサービスです。
しかしその『Instagram』が、最初は『Burbn(バーブン)』という旅先のチェックインアプリだったことはご存知でしょうか。

Instagramの生みの親であるケビン・サイストロム氏が、数ヶ月のMVP開発でつくられた『Burbn』をリリースしたところ、反応はいまいちでした。
しかし『Burbn』のユーザーを調査したところ、『写真を共有する』という1つの機能においては、ニーズがあることを把握できました。
その後写真共有機能に絞ってリリースされた『Instagram』がどのような成功を収めたかは、ご存知のとおりです。

もしケビン・サイストロム氏が、Burbnの製作に持っているすべてのものをつぎ込んでいたら……Instagramは生まれていなかったかもしれません。
MVP開発で生まれた『Burbn』の失敗により、『本当のターゲット層』を知ることが出来たからこそ、Instagramの成功が生まれたのです。

メリット3:収益化が早い

どれだけ優れたアイデアを持っていても、資金繰りがうまくいかなければ事業は頓挫します。

しかしこの点、MVP開発は有利です。
そもそもの開発コストを最小限に押さえているので、資金がショートするリスクも小さくすることが出来ます。
また開発期間も短いため、迅速に収益を得ることが出来ます。

例え資金繰りに問題がなかったとしても、早いことは重要です。
何年も掛けて『最高のアプリ』を作っている間に、GAFAが同じアプリをリリースするかもしれません。そうなれば全てが終わってしまいます。

メリット4:銀行や投資家に強くアピールできる。

また、MVP開発は銀行や投資家に融資を依頼する際にも、強力なツールとなります。

あなたが作りたいIT事業について、どれだけ綿密に事業計画書を作り、担当者に熱く語ったとしても、それが伝わるかどうかは祈るしかありません。
例え伝わったとしても、今度は「本当にそんな物を、この期間とコストで作れるのだろうか」と、疑問を持たれるリスクもあります。

しかしすでにMVP開発で作った試作品が手元にあるならば、話は早いでしょう。
あなたが作りたいIT事業のアイデアは、ほぼ100%先方に伝わります。
まさに『百聞は一見に如かず』という言葉のとおりです。

MVP開発で気をつけるべき点

ここまで聞けば、まるでMVP開発が万能かのように見えるかもしれませんが、しかし実際にMVP開発をやって見る際には気をつけるべき点がいくつかあります。

気をつけるべき点1:サービスの肝を捉えた製品かどうか

いくら『Minimum最小限の Viable実用可能な Product製品』と言えど、サービスの重要な部分を捉えていない製品を作ってしまったならば、全ての歯車が狂うことになります。

例えばあなたがInstagramのようなサービスを開発しようとして、誰にもシェアできない、ただのカメラアプリを作ったならどうでしょうか。
テストする人は、何をどう評価したらいいかわからないでしょう。

そのサービスの一番大事で、差別化できる箇所、そこを明確にした上でMVP開発を行いましょう。

気をつけるべき点2:そもそも「利用してもらう」ためにアプローチが必要

『素晴らしいアイデアには皆が注目してくれるはず』というのは、残念ながら幻想に過ぎません。
アプリにせよ、ウェブサービスにせよ、ただ公開して置いておくだけでは、誰も利用しようとしないでしょう。

プレスリリースを打ったり、広告を使ったり、既存顧客にDMを送ったり、といった積極的なアプローチを行ってください。

気をつけるべき点3:デザインに凝る必要はなし、しかし「わかりにくいデザイン」も不可

多くの場合、MVP開発にデザインは必要ありません。
優れたデザインよりも、いかにその製品が素晴らしいかに集中してほしいからです。

しかしながら、その『製品の素晴らしさ』を霞ませるほど、使い勝手の悪いUIを作ってしまったら…?
せっかくの素晴らしさも伝わらないでしょう。

MVP開発にふさわしいのは、シンプルで邪魔にならないデザインです。

気をつけるべき点4:MVP開発が向いていないケースもある。

全ての事例に置いてMVP開発が正しいわけではありません。

例えば、あなたが1000人規模の会社で使う、社内ツールの開発を任されたとしましょう。
現在使っているツールは1年後に契約が切れるため、それまでに同じ機能を持つツールが必要です。

このようなケースでMVP開発を取る必要はありません。
すでに「ニーズ」も「必要な機能」も全て明らかだからです。
むしろ、『最小限の構成』で社内ツールをリリースした場合、業務は混乱し支障をきたすでしょう。

気をつけるべき点5:フィードバックが全て正しい訳では無い

MVP開発の大きなメリットの1つとして「リアルなフィードバック」を入手できる点を挙げましたが、
『顧客の意見が全て正しい訳ではない』ことも肝に銘じておきましょう。

この点よく挙げられるのはマクドナルドの「サラダマック」です。
ハンバーガーに求める点を調査したところ『もっと体によくして欲しい』『野菜を増やしてほしい』という意見が多かったようですが、
実際に「サラダマック」を作ったところ、まったく売れませんでした。
そもそも、ヘルシーさを求める客はマクドナルドへ行きません。

フィードバックを鵜呑みにするのではなく、利用状況等のデータに着目し、どこを改善するのが重要なのか、見定めるようにしましょう。

MVPの開発費用はどのぐらい掛かる?

さて、そのようなMVP開発を実際にやってみたいと思った場合、どのぐらいの費用がかかるのでしょうか?

正直なところ、一概に言えません。
極端な話、『MVP開発』は数万円~といったごくごく少額でも成立します。

例えばクラウドストレージ大手『Dropbox』ですが、
最初期、ベータ版の顧客を集める際、用意したのは数分間のデモビデオだけでした。

彼らがこのビデオを作るにあたって、実際のシステムはまったく作っていません。
それでもベータ版の待機列は、このビデオ公開後75,000人まで増えました。
アイデアを売り込み、ニーズを測るにはそれで十分だったのです。

このような手法は、開発者の間で『スモークテスト』と呼ばれています。
もちろん、全てのプロダクトでこの手法が通じる訳ではありません。
他にも『コンシェルジュ』や『オズの魔法使い』といった数々の手法があるのですが、
重要なのは『MVP開発で何を達成したいか』という目標を明確にすることです。
その目標によっては、低コストなランディングページを作ればいいだけになるかもしれませんし、
いくらかのコストをかけて、アプリのプロトタイプを作る必要が出てくるかもしれません。

しかし、きちんと目標にあったMVP開発を行なうならば、『正しい結果』を得ることはできるでしょう。

新規IT事業において、『MVP開発』はベストな選択

『MVP開発』という言葉自体は、あまり聞き慣れてないかもしれませんが、
今現在評価されている多くのIT事業も、MVP開発から始まりました。

既に記事で上げた『Spotify』『Instagram』『Dropbox』だけでなく、
『Amazon』『Facebook』『Airbnb』『Uber』等も、全てMVP開発が最初です。

これまでもIT業界は「数年で時流が変わる」と言われていましたが、
今では「数ヶ月・数週間で時流が変わる」といった様相を呈しています。

もしあなたが新規のIT事業を立ち上げようと思っているならば、可能な限り『MVP開発』から入ることをおすすめします。

どのようなアプローチが可能なのか「具体的な話を聞きたい」という場合は、ぜひ一度お問い合わせください。

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